オカリーナ、微笑みの口元で

オカリーナの吹き口、これを「べっこ」と言うらしい。

ヨーロッパで発達した楽器の多くは、吹き口は取り外して取り替えることができる。
この場合の呼び名は「マウスピース」と言い、マウスピースに対して口元の形を
「アンブッシュアー」と言って、いかにこの形を作り上げるかが重要なこととして
時間をかけて修得するもののひとつである。

オカリーナだけが特別というわけではないのに、別の呼び名が使われて、
口元の形もあまり意識されないというのはどういうことだろう。

実は、オカリーナの吹き口は、割と無造作にくわえて、無造作に息を
吹き込んでも、だいたい同じような音が出るように作られている。

息の楽器であるにも関わらず、一人ひとりの息の違いを吸収するような作りに
なっていて、誰が吹いても同じような音が出る楽器がいいとされているのだ。

もともとが一体成型の「焼き物」なので、取り替えることができない。
そのため、製作者は、もっとも神経を使って、この「べっこ」を作り上げる。

こうして、オカリーナは、誰でも吹けば音が鳴るように作られる。

それでも、口元の形には、重要な意味がある。
口元には、様々な筋肉が集まっているからだ。

たとえば、舌を使って、「トゥトゥ」と吹く「タンギング」だが、
口元の形によって、舌を動かす筋肉が微妙に変わってくる。
さらに、口の中の空気の形や通り道、息の圧力も変わってくる。

どうしたらいいのか・・・むずかしいことは考える必要はない。
アンプシュアの基本は、「微笑みの口元」だ。
機会があれば、クラリネットやフルートを吹く人に尋ねてみるといい。
「アンプシュアの基本の形は何ですか。」と。

たとえば、赤ちゃんの口元に人差し指を近づけると、
吸いつくようにその指を吸い始めるだろう。
それぐらい柔らかいイメージをもって、「べっこ」に唇をふれて、
微笑むように、少し唇のはしを持ち上げるといい。
えくぼがない人も、えくぼが出来ているようなイメージで
気持ちも明るく、オカリーナに息を吹き込もう。

ほら。その一瞬から、未来の音色が聞こえてくるだろう。